富貴蘭学事始
江戸時代明治・大正・昭和(戦前)⇔昭和(戦後)富貴蘭を楽しむ
  富貴蘭の過去を印刷物から推測し探って見ようと、手持ちの蒐集資料を参考に富貴蘭の歴史と魅惑に迫って見ます。
  
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 ◎昭和32年に国香会が発行した、会報東洋蘭に風蘭銘品分布表なる面白い記録を以下にお披露目しよう。  この頃はソ連が人工衛星を打ち上げ、東海村に原子の火が灯り、南極に昭和基地が出来、不運の総理大臣 石橋湛山から岸信介 内閣が誕生した頃である。この数年後[貧乏人は麦飯を食え]で有名な池田内閣が発足するマダマダ日本は戦後12年の貧しい時代に、東洋蘭の仲間として富貴蘭を取り上げている、その内容を取り纏めて以下に示します。
 
 ◎貴品類はほぼ正確な本数、普通品はだいたいの推測。とある
品種名、昭和32年頃の現存数順で表示・『湖東錦 5本』・『星光殿 2本』・『萬国司 2本』・『轡虫 5本』・『鉄橋殿 5本』・『鈴虫 4本』・『羆 22本』・『御劔 20本』・『富士中斑 25本』・『弁慶丸 11本』・『雲竜滝 30本』・『織姫覆輪 10本』・『真鶴 41本』・『国光殿 43本』・『春及殿 11本』・『雅天楽 8本』・『宝生殿 7本『・『金幽晃 1本』・『雲竜滝覆輪 8本』・『金剛殿 7本』・『美香登 7本』・『金明玉 3本』・『聖代 14本』・『陽明殿 17本』・『福寿丸 140本』・『金紗墨 3本』・『貴青玉 25本』・『新湖東覆輪 30本』・『大洞丸 15本』・『金城錦 5本』・『紫宸殿 128本』・『白牡丹 30本』・『金牡丹 90本』・『青王錦 48本』・『宝熨斗 49本』・『大八洲 145本』・『幽谷錦 108本』・『貫雪 44本』・『島青海 117本』・『唐錦 150本』・『鞍馬熨斗 17本』・『御旗 67本』・『月殿 124本』・『玉川錦 19本』・『金銀羅紗 255本』・『真鶴 95本』・『慶賀 220本』・『富士覆輪 34本『・羅因の光 235本』・『富士錦 32本』・『金甲覆輪 38本』・『氷室錦 15本』・『御所錦 6本』・『建国殿 63本』・『春霞 210本』・『朝霞 78本』・『舞鶴 20本』・『司光殿 9本』・『宝錦 14本』・『琥珀 170本』・『水晶覆輪 107本』・『大江丸縞 235本』・『烏帽子丸 75本』・『淀の雪 220本』・『孔雀丸 170本』・『富貴殿 430本』・『満月 260本』・『大波青海 370本』・『青海波 580本』・『金銀閣 450本』・『獅子甲龍 330本』・『金兜 290本』・『都羽二重 250本』・『羆覆輪 330本』・『織姫 360本』・『金広錦 1050本』・とある。この数字は全国各地域別(中部、関東、関西、中国、四国、九州)の合計ノミを掲載したが、調査方法などは一切説明は無く調査した人は、杉村常三郎 とある。

 ◎昭和32年当時、ここに掲載した品種数76種で全国合計8663本である。この数の仮に3倍あったとしても全国の富貴蘭が僅か2万6千本程度と云う事になる。戦乱を生き延びた富貴蘭の終戦後12年の数である。

 
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◎昭和50年代後半に始まる富貴蘭黄金時代の幕開けは、昭和45年(1970)常磐園の自費出版による「風貴蘭」が火付け役となった。
 現代の富貴蘭の歴史はこの小冊子から始まったと云っても過言ではない。この本を著作した角谷 新次、榊 莫山 両先生と出版元の松村 繁三郎 先輩の豊かな歴史観と富貴蘭を結びつけ、今まで語り継がれていた逸話を、一冊の本として編纂された功績は実に大きな意義が有ったと敬服致します。
 小冊子の[序]の文中で・徳川も中期()、この風蘭のブームがおこりました・・・・・に始まる富貴蘭物語が、富貴蘭黄金時代の序曲となったのでした。
  (※和漢三歳図会が編纂された頃)          

 コノ後バブル時代に突入、富貴蘭も大暴騰時代に入ります。バブル時代の寵児、に加え湖東錦も3Kを超える史上空前の最高値で取り引きされると云う狂った平成初期であった。